ムスリムも愛するイエスとイスラームの関係とは?


 アッサラームアレイコム
 今日はクリスマスとイエス・キリストについて。
 クリスマスというと街が華やいで、クリスチャンでなくても
なんとなく心弾む時期、日本人にとっても家族で楽しんだり、
恋人とデートしたりと一大イベントとなったこのクリスマスですが...
そもそも「クリスマス」って何でしょう?



「クリスマス」の語源

クリスマスは英語では

”Christmas”

と書きますよね。

 この”Christmas”という言葉は「救世主」を意味する

”Christ=(キリスト)”


「ミサ(礼拝)」を意味する

”mas”

が合わさって出来ました。

 ですので、私たちがよく耳にする「イエス・キリスト」というのは「救い主イエス」という意味で
「イエス・キリストさん」という人名ではないんですね。




では「クリスマス」って何?

「救い主」であるイエスの降誕を記念して祝う日です。
クリスチャンの方にとっては、復活祭(イースター)と並ぶ大切な行事の一つですね。
私も高校時代まではこの時期はひたすらハレルヤ・コーラスの練習をし、

「Joy to the world~♪」

だの

「ぐろーおおおぉおーおおおぉおーおおおぉおーりあ~♪

なんて歌っていたものです...。

 つまりクリスマスは救い主であるイエスの誕生日、
なんですが...

実はイエスの誕生日は12月25日ではないんです。


 というのは、イエスの誕生日というのは実際のところいつなのかははっきりとは分かっておらず、
3世紀ごろになって教会が、

「この日、ということにしましょう」

と決めたのが12月25日なんですね。
そしてイエスの誕生年も紀元前から紀元4年ごろまでとばらつきがあり、
誕生日も本当は春だっただの秋だっただの諸説あるのですが...
諸々の歴史的な研究から少なくとも

「冬ではない」

ことははっきりとしているようです。
 
 そりゃそうですよね...
興味のある方は新約聖書を読んで頂ければ分かるかと思うのですが、
イエスの生誕が描かれている『ルカの福音書』では、
イエスが生まれた頃、その地方では羊飼いたちは野原で羊とともに夜間を過ごしているんですね。

 イエスが生まれたベツレヘムの12月の気温は調べたところ7度から14度なので、
いくらなんでも寒さの厳しいこんな時期にいくら貧しい羊飼いでも野宿しているわけないよね、
ということで...。

 では、なぜイエスの誕生日は12月25日に定められたのか?
 どうやら冬至の太陽神を祀る異教の祭りが取り入れられたらしい、
というのが有力な説のようです。

 そんなこんなで我々人類の救い主であるところのイエスさんは12月生まれということにされ、
かれこれ2千年近く世界中の追従者(キリスト教徒)に祝われているのですが...

 イエス様ラブ!なのは何もキリスト教徒だけじゃないんです。  




イエスはクルアーンにも

 ようやく本題にたどり着きました。
キリスト教でもう神様レベルでとても大切にされているイエス様。

 この方、実はイスラームの聖典『クルアーン』にも登場するんです。


これがこちら。

それからかの女は,かれ(息子)を抱いて自分の人びとの許に帰って来た。かれらは言った。「マルヤムよ,あなたは,何と大変なことをしてく れたのか。ハールーンの姉妹よ,あなたの父は悪い人ではなかった。母親も不貞の女ではなかったのだが。」そこでかの女は,かれ(息子)を指さした。かれら は言った。「どうしてわたしたちは,揺能の中の赤ん坊に話すことが出来ようか。」(その時)かれ(息子)は言った。わたしは,本当にアッラーのしもベで す。かれは啓典をわたしに与え,またわたしを預言者になされました。またかれは,わたしが何処にいようとも祝福を与えます。また生命のある限り礼拝を捧 げ,喜捨をするよう,わたしに御命じになりました。またわたしの母に孝養を尽くさせ,高慢な恵まれない者になされませんでしたまたわたしの出生の日,死 去の日,復活の日に,わたしの上に平安がありますように。」そのこと(イーサーがマルヤムの子であること)に就いて,かれら(ユダヤ教徒,キリスト教徒) は疑っているが本当に真実そのものである。アッラーに子供が出来るなどということはありえない。かれに讃えあれ。かれが一事を決定され,唯「有れ。」と仰 せになれば,即ち有るのである。”


  青字の「イーサー」、
これは「イエス」のアラビア語の読み方です。

 以前、お話しした「マルヤム」(最も優れた女性4参照)。
マルヤムはアラビア語で「マリア」、
つまり聖母マリアのことですので、クルアーンにも処女マリアから生まれたイエスの生誕物語が語られているんですね。 


 それではムスリムにとっての「イーサー」、
クリスチャンにとっての「イエス」、
何が違うのでしょう?



ムハンマド(SAWS)に次ぐ偉大な預言者

イスラームではイーサー(AS)はムハンマド(SAWS)同様、
アッラーから啓典(福音書)を与えられ、神の言葉を伝えた預言者として敬愛されています。
そしてクルアーンではイーサーの奇跡として生誕直後から母マルヤムを庇うために口を聞き、
粘土の鳥に命を吹き込んだり、
死者を甦らせたり、
といったエピソードが語られています。
(聖書でも盲人の目を癒したり、数匹の魚とパンで5千人のお腹を満たしたりと色々な奇跡が記されています。)

 その為、ムスリムにとってはイーサー(AS)はあくまで預言者であり、人間なんですね
ですのでムスリムはイーサーをクリスチャン同様、とても大切にしますが
「神」ではないのでカトリックの「三位一体」の考えについてはイスラームでは否定をしています。

“啓典の民よ,宗教のことに就いて法を越えてはならない。またアッラーに就いて真実以外を語ってはならない。マルヤムの子マスィーフ・イーサーは,只アッラーの使徒である。マルヤムに授けられたかれの御言葉であり,かれからの霊である。だからアッラーとその使徒たちを信じなさい。「三(位)」などと言ってはならない止めなさ い。それがあなたがたのためになる。誠にアッラーは唯―の神であられる。かれに讃えあれ。かれに,何で子があろう。天にあり,地にある凡てのものは,アッ ラーの有である。管理者としてアッラーは万全であられる。”


*三位一体って?
 三位一体とは神を「父」として、イエスを神の「子」、そして両者をつなぐ「聖霊」という3つの様式で存在するが「神」の本質は一つとするカトリックの思想をいいます。これによりイエスは「人」であると同時に「神の子」つまり神とする、人性と神性の統合がなされています。
(対しプロテスタントではイエスを唯一の主=神として、三位一体の思想は有しません。)
 
 クルアーンには25名の名が預言者としてその名が記されていますが、イエスはノア、アブラハム、モーセ、ムハンマドと共に最も偉大な5人の預言者として数えられています。クリスマスを祝うことはしませんが、イエスは私たちムスリムにとっても特に大切な存在なのです。
 
   それでは、また次回。マァサッラーマ~


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