夕方になると「帰ります」~認知症あるある「夕暮れ症候群」~


 認知症シリーズ、今週は帰宅願望についてのお話しです。
 こちらは結構な頻度で見られる症状で私もよく「もう帰らないと」と言われたり、ウロウロしているので聞くと「家に帰る」etc...といった訴えをよく聞いたりするが、なぜこのような症状が起きるのでしょうか?

「帰ります」にも訳がある
 この症状が起こる主な原因としては「見当識障害(時間、場所、人などが分らなくなる)」と「記憶障害」により、昔の若い頃の感覚のまま動いてしまう、ということがあります。

※中には本当にそこ(施設など)にいるのではなく、単純に元々住んでいた家に帰りたい、というものもあります。
 
 典型的な例としては夕方になるとそわそわして「もう家に帰らないと...」「子供のご飯を作らないと」と出ていこうとする、というものですね。

1)見当識障害により今いる場所が「自分の家」であることが認識出来なくなり、よその家にお邪魔している=いつまでも居座ると迷惑だからお暇しないと...と考えて出ていこうとする。
 施設などで、自分はどこかに入院している、どこかに宿泊していると思っており、もう退院だから帰らないと、そろそろ家に帰ろう、と帰ろうとする。 

2)記憶の逆行により、今住んでいる場所ではなく、昔住んでいた場所や生まれ育った場所を「自分の家」と思い、そこに戻ろうとする

3)記憶が逆行により、本人は数十年前の世界に居る為に、余所にお邪魔しているがそろそろ子供が○○から帰る時間だから帰らないと、主人が帰ってくるから帰って食事の支度をしないと、帰って留守番している子供にご飯を食べさせないと、(もう引退しているが)仕事に行かないと...etcと出ていこうとする 


4)環境の変化による混乱や、施設への入所を納得していない、理解しきれていないなどの理由の為に「今自分が暮らしている場所」と認識出来ず、家に帰ろうとする

 などなど、色々なパターンがあるんですね。(もちろんこの4パターンが全てじゃないですよ)いずれも今自分が住んでいる場所が「自分の家」と認識、理解出来ていないこと記憶が逆行していることが原因です。


どう対処したら良い?
 自分の家に居るのに「帰ります」と出ていこうとする場合、いずれにしても「帰れない」「帰ってはいけない」といった言葉で止めないことが大事です。それは本人は”お邪魔になっているのだし帰らないと”と思っているのに、帰ることを禁じられると混乱や不信感、反発の原因となるからです。また、勝手に出て行くからと鍵を閉めて閉じ込めるようなこともしない方が良いです。

 それではどう接したら良いか?ですが。

 まずは「帰りたい」という気持ちは受け入れましょう。そして、声のかけ方ですが、帰りたい気持ちは否定せずに「よければ夕食を食べてから...」「もう遅いので良かったら今日は泊っていってください」「もう一杯お茶をどうぞ」といった風に気持ちを組みつつも、こちらに合わせてもらえるような声かけをすると良いでしょう。常に出ていこうとする、勝手に出ていく、など強固なものでなければ大体はこのパターンで自然と落ち付くことが多いです。
 また可能なら「近くまで送りますよ」と一緒に散歩に出て気を紛らわせて、タイミングを見て帰宅ということも出来ます。

 この、夕方などに落ち着かなくなったり、「帰ります」と出ていこうとしたり、という状態は「夕暮れ症候群」とも呼ばれ、夕方から出現することが多いんですね(日中に起こる場合ももちろんあるのですが)。
 ですので私も、「夕食の用意をしているので食べて行って下さい」や「もう遅いし真っ暗だから明日、朝からゆっくり帰ったらどうですか」といった声かけをしたり、「帰りたいですよね~また○○さんに相談しないとだめですね」「そうですね、なかなか迎えに来ないですね」といった風に帰らせてあげられなくてゴメンね~という空気を醸し出しつつ同調してその後話題を変えて気を逸らしたり、といった対応することが多いのですが、概ねそれで落ち着く方が多いです。

不安な気持ちを取り除こう 
 さて、今回は夕暮れ症候群の原因と対処について軽くお話ししましたが、今までにもお話しをしているように認知症の方は「不安な気持ち」を抱えている方が大半です。そして、この不安な気持ちや居心地の悪さなども「帰りたい」という気持ちの原因になります。ですのでそういった「不安な気持ち」に寄り添い、安心してもらえるような接し方が大事になります。
 

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