最も優れた女性4~クルアーンに名を記された唯一の女性・マルヤム~



アッサラームアレイクム
 「最も優れた女性」シリーズ、最後はイムラーン家の娘、マルヤムについてです。
 今までハディージャ、ファーティマ、アーシヤと順番にみていきましたが、中でもマルヤムは特に重要な方ではないかと思います。



 「マルヤム」とはアラビア語で「マリア」を指します。
 マリヤム(AS)は預言者イーサー(AS)の母、つまり聖母マリアのことなんですが、彼女はイスラームでも貞節で誠実な女性、敬虔な女性としてクルアーンで語られ、模範になっている方の一人です。
 キリスト教でも「穢れなき御宿り」と呼ばれたり、純潔の象徴である白百合の花と共に、誠実さや禁欲を表す青い服などで描かれていますよね。
 また、マリヤム(AS)はクルアーンで唯一その名が挙げられ、章の名前にもなっています。(クルアーン19章)

それではクルアーンから彼女がどういう女性だったのかをみていきましょう。

「この書物の中で、マルヤムのことを思い出しなさい。一族から離れ、東の片隅に落ち着いたとき。彼女は自分と彼らの間に幕を垂らした。そのとき、我々は自らの魂を送り、彼女の前に完全な人間の形となって現れた
[マルヤムは天使に]言った。『まことに私はあなたに対して、慈悲深い神の加護を求めます。もし敬虔であるならば』 [天使は]言った。『まことに私は、清らかな息子をあなたに与えるための、あなたの主の使徒に過ぎない』
マルヤムは言った。『私にどうしたら子供ができるでしょう? 私は人間と接触したことはなく、また不貞を働いたこともありません』 [天使は]言った。 『命はこのようなものである。あなたの主は仰った。“彼女を人々のためのしるしとし、慈悲を授けるのは、私にとって容易いことであり、必ずや実現される』」(クルアーン19:17-21)

 聖書で言うところの受胎告知のシーンですね。彼女は一族から離れて礼拝に勤しんでいましたが、突然現れた男性の姿をした天使(ジブリール)に恐れをなし、アッラーへ加護を求めています。
 イスラームでは「貞節である」ことは非常に大切なことであり、こちらでもマルヤム(AS)は穢れを知らず、罪から遠ざかろうとする敬虔な女性として語られています。

「それからマルヤムは妊娠し、遠く離れた場所へ逃れた。それから、分娩の痛みに襲われ、ナツメヤシの木に近づいた。[マルヤムは]言った。『すでに死んで、忘れられていたらよかったのに』」(19:22-23)
「それからマルヤムは、新生児を胸に抱き、彼を自分の民の許に連れて行った。彼らは言った。『マルヤムよ、あなたは本当になんという大変なことをしたのか。ハールーンの姉妹よ、あなたの父は悪い人間ではなかったし、あなたの母もまた、不貞な女性ではなかったのに』」 (19:27-28)

 その後マリヤムは懐胎し、人里を離れます。その後、彼女はイーサー(AS)を産み、我が子を胸に人々の元に戻りまます。
 クルアーンではこの後マルヤム(AS)への中傷はアッラーの奇跡によってイーサー(AS)の口から退けられるのですが、この時代にうら若き娘が妊娠をする、というのは命にも関わる大変な一大事であり、マルヤム(AS)の受けた誹りや人々の怒りは相当なものであったであろうことは想像に難くありません。
 また、彼女は一人で人里から離れてイーサー(AS)を産み、苦痛と中傷に耐え、大変な困難にも耐え抜きました。
 このことからも彼女は忍耐深い女性でもあったのであろうことが分かります。

 このマルヤム(AS)については、彼女の名を冠した19章(マルヤム章)以外にも彼女の一族・イムラーン家の章でも言及されています。
 イムラーン家はイブラヒームやムーサー、ハルーン(アブラハム、モーゼ、アロンー彼らに平安あれー)の一族で預言者(彼と彼の家族に平安と祝福あれ)の一族はその子孫にあたります。

「イムラーンの妻がこう祈って言った時を思え。『主よ、私はこの胎内に宿ったものをあなたに奉仕のため捧げます。どうか私からそれをお受け入れ下さい。まことにあなたは全聴にして、全知であられます』と。
それから出産の後、彼女は祈って言った。『主よ、私は女児を産みました。ですから、神の家に住んで奉仕することは無理でしょう。』
アッラーは、彼女が産んだ者を知りたもう。私は彼女をマルヤムと名付けました。あなたにお願いします。どうか彼女とその子孫の者を、呪うべき悪魔からお守り下さい。』と。」(3:35-36)


「天使たちがこう言った時のことを思え。『マルヤムよ、まことにアッラーはあなたを選んで、あなたを清めたまい、よろず世の女人を越えて選びたもうた。 マルヤムよ、あなたの主に崇敬のまことを捧げて跪拝・サジダせよ。立礼・ルクーする者と一緒に立礼せよ。』と。」(クルアーン3:42-43)

「また天使たちがこう言った時を思え。『マルヤムよ、まことにアッラーはじきじきのお言葉で、あなたに吉報を伝えたもう。マルヤムの子、その名はマスィーフ・イーサー(メシヤ・イエス)。現世でも来世でも高い栄誉を得、またアッラーの側近の一人となるであろう。』」(3:45)

 ここからマルヤム(AS)はアッラーに捧げられ、そしてアッラーからも選ばれた女性でもあることが分かりますね。

 マルヤム(AS)はイーサー(AS)や諸預言者たち(彼らに平安あれ)と同じく一介の人間であり、アッラーもクルアーンの中で「ただの誠実な女であったに過ぎない」と語られているのですが、同時にイーサー(AS)の母、という大変な栄誉を授かり、クルアーンにも名を語られた女性です。

 私達が彼女のような生き方をするのは並大抵のことではない(というよりも無理?)ですが、彼女の敬虔さや人格などはムスリマとしておおいに学び、倣うべき姿勢の一つだと思います。

それではまた来週。来月もイスラーム史を彩る偉大な女性たちのお話しです。

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