被害者なのに死刑!?女性は性器切除!?果たしてイスラームとの関係は?

アッサラームアレイクム

今回はよくイスラームに結びつけて非難されている悪習、「名誉殺人」と「女子割礼」についてのお話しです。
果たしてこの二つの悪習は本当にイスラーム由来なのかどうか?を今日は探りたいと思います。


・名誉殺人・
まずはこちらから。婚外交渉を行った女性、強姦被害などに遭った女性が一族の名誉を汚した、と親兄弟や親族に殺されてしまう…というアレですね。
日本語メディアでもこういった情報は実際のところ沢山あり、日本人女性も過去に殺害されるなど同じ女性として居た堪れない話しなのですが…


結論から言うと...

イスラームに真っ向から逆らう「非イスラーム」的行いであり、イスラームの教義的にもこのような考えはありません

じゃあ、なんで???沢山女性が殺されているじゃん!と思った方、大勢いらっしゃるかと思います。

こちらは(一部の)イスラム教徒自身にもイスラームのものと誤解をされていることが多いようなのですが、名誉殺人自体は元々部族社会やイスラーム以前からの土着の風習として存在していたもので、後に混同されたものがイスラームの名の下行われるようになったものなんですね。
そしてこの風習は現在もインドやアフリカ各地、非イスラーム圏でも風習して残っているものでありイスラームに限ったことではないのです。
(こうしてみると遠い世界のようなお話ですが、日本でも100年ほどまでは民法に姦通罪なるものがあり、女性だけが処罰されていました。)

それでは、姦通や強姦について、実際にイスラーム法ではどのように定められているのか、ですが…
イスラーム法では姦通の罪は既婚者の場合は男女共鞭打ち100回(もしくは石打による死刑)、未婚者は鞭打ち(法学派によっては追放が加わるなど若干の違いはあります)となっています。
(石打ちについてはハディースが根拠。 )
ですので、イスラームでは姦通の罪に対して女性だけが罰せられる、死刑になるというのは元来おかしなことなのです。

”あなたがたの中2人で罪を犯した者は(2人とも)処罰しなさい。だが、その罪を悔いて身を修めるならば、そのままに放って置け。本当にアッラーは、度々御赦しなされる方、慈悲深い方であられる。”(クルアーン4:16)
姦通した女と男は,それぞれ100回鞭打て。もしあなたがたが,アッラーと末日を信じるならば。アッラーの定めに基づき,両人に対し情に負けてはならない。そして一団の信者に,かれらの処刑に立会わせなさい。”(クルアーン24:2)

クルアーンには売春についても記載があり、売春を強要された少女は罪に問われることはありません。

”奴隷の娘たちが、貞操を守るよう願うならば、現世の果ない利得を求めて醜業を強制してはならない。かの女らが仮令誰かに強制されたなら、アッラーがやさしく罪を赦し、いたわって下さろう。”(クルアーン24:33より抜粋) 

女性を姦通の罪で訴える場合、自分以外の4人の男性の証言(女性の場合は2人につき男性1人分とみなす)と証拠(日時、場所、女がどのような様子であったのか、男性器が女性器に挿入されたのを見ていること)に加え、以下の諸条件を満たしている必要があります。
加えて、証人を出せなかった場合は所定の罰を受けると共に、以後は一切法廷の場において証言が出来なくなります。

”貞節な女を非難して4名の証人を上げられない者には、80回の鞭打ちを加えなさい。決してこんな者の証言を受け入れてはならない。かれらは主の掟に背く者たちである。”(クルアーン24:4)
 
諸条件はこちら(Wikipediaより抜粋)イスラーム法においてはジナの罪を告発するためには以下の条件を満たしていなければならない。

  • 被告人は告発の前にムスリムであることを知られていなければならない。
  • 被告人は常識を備えている人間であり、性行為が行われていた時に酩酊していない。
  • 被告人は大人でなければならない。(この大人の解釈にも諸説あり、イスラム教で婚姻可能年齢の9歳以上とする解釈もある)
  • 被告人は自分自身の自由意志によって不倫を行ったのでなければならない。
  • 4人の男性の目撃者または性行為を行った証拠が無ければならない。
死刑が適用されるためにはさらに、以下の条件が必要である。

  • 被告人は自由でなければならず、奴隷であってはならない。
  • 被告人は既婚者であり、不倫を行う前に正当な夫と合法的な性的関係を持っていなければならない。
  • 被告人は、妊娠していない、子供に授乳していない者である




妻の不貞を訴えるといったケースについては自分以外に証人がいない場合は妻本人の証言も夫側と同等のものとして扱われます。

"(自分の妻を告発する者で、自分以外に証人のない場合は、単独の証言で、自分の言葉が真実であることをアッラーにかけて四度誓う。そして五度目に、「もし自分の言葉が虚偽なら、アッラーの御怒りが自分の上に(下るように)。」(と誓う)。彼女がその(投石の)懲罰を免じられるためには、彼女はアッラーにかけて彼(夫)の言葉が虚偽であることを四度誓い、そして五度目に、「もし(夫の言葉が)真実ならば、アッラーの御怒りが自分の上に(下るように)。」(と誓うのである)。 "(クルアーン24:6‐9)

但し、夫が不貞の現場を実際に目にし、それを法廷で訴える場合は証人は要らないとされています。


このようにイスラームではクルアーンにも姦通した男と女は鞭打ち、と明記されており女性だけが罰せられる、女性だけが死刑になる根拠はありません。
また、この刑罰はクルアーンでアッラーによって定められたものなので、人間が勝手に減刑をすることは出来ません

 しかしながら、イスラーム法での姦通罪の成立要件は厳しいにも関わらず、実際にはいとも簡単に姦通罪が成立して女性のみが処刑されるという現実があります。

また強姦被害でも被害に遭った女性がそれが強姦であることを立証する為に4人の男性の証言を求められる、など被害者女性にとってより不利になるような条件が適用されており、
男性は「女が誘った」という言い逃れによって減刑されるが女性は処刑される、殺されはしなかったとしても私刑という形で強酸を浴びせられたり顔の一部を削がれたりということが一部の国と地域で多々起こっています

これにより一部中東地域の数カ国だけ世界中の年間の死刑数の9割以上を占め、死刑の執行方法も残虐であるといった理由で非難の対象にもなっています。
私もこれについてはクルアーンに定められている通りに男女共が罰せられずに、女性のみが処罰される法解釈や力では抵抗出来ない女性により厳しく罪を問う慣習は改められるべきだと思っています。


・女子割礼・
こちらもイスラームのものとして、よく混同されており非難されているものですね。
そして、実際にアフリカなどで大勢の少女達が重大な後遺症を患ったり、不衛生な環境で時には命を落すなどして国際的にも問題になっているのですが...

この国際問題として非難の対象になっている女子割礼はいわゆる「ファラオ式割礼(女性器切除)」と呼ばれるものです。
これはどのようなものかと言うと...大陰唇・小陰唇・クリトリスと女性器をことごとく切除して、更にその切除した部分を縫って塞いだ上に尿や経血を通せるようにブスブスと小枝などで穴を作り、傷が癒着するまで両脚をグルグルに縛りあげる、というなんとも恐ろしく残酷なものなのですが、

こちらも結論から言うと、イスラームとは無関係な風習です。




こちらの地図はWikipediaよりお借りした、アフリカ大陸における女子割礼(FGM=Female Genital Mutilation)の分布図です。
地図から見るとイスラーム圏では確かにエジプトなどは色が濃いのですが、こちらの地域で行われているのは「スンナの割礼」もしくはクリトリスデクトミーと呼ばれる、クリトリスを包む包皮の一部または全てを除去(男性の割礼、包皮切除と同じですね)もしくは僅かに切り込みを入れる、というもので割礼の中では一番程度が軽いものです。

*女子割礼の風習はイスラーム以前からアフリカに存在していたものであり、割礼の風習自体も他の宗教やアフリカ以外の地域でも存在します。

イスラームではこちらの僅かに包皮を切り取るタイプに関しては脆弱ながらもハディースからの根拠があり、法学派によっては推奨行為、もしくは合法とされてはいますが、信憑性は低い為、非合法とみなす学者も存在しており意見が分かれています。

「割礼は男性にとってスンナであり、女性にとっての栄誉です。」(ムスナド・アフマド伝承集)
「多少なら切り取っても良いが、深く切り込んではいけません。そちらの方が女子の顔に輝きを与えるし、夫にとっても好ましいのです。」(ムアジャム・アッ=タバラーニー・アル=アウサトによる伝承)

ただ、脆弱ながらもこのようなハディースも残っており、預言者も明確に禁止をされなかったことからは合法と推測はされてはいるようです。
ですが、女子の割礼に関してはクルアーンには一切記述がなく、このハディースでも「多少なら切り取っても良いが、深く切り込んではいけません 」とあるように、過激にはしてはいけないことが分かります。
このことからやはり前述のファラオ式のような女性の心身をひどく傷つける方法は許されていないことは明白です。

また、女性器切除については1990年代、多くのイスラーム法学者が反対運動を繰り広げており、2005年にはモロッコで行われた宗教学者と閣僚たちの会議で「非イスラーム」と宣言されています。
(ハルーン・シディキ『一冊で知るムスリム』より)

女性器切除は減ってきているとはいえ、まだまだアフリカの一部地域で行われています。このような悪習は早く絶たれ、全ての女性が安全に過ごせることを願うばかりです。


それでは、今日はこの辺で...
マァサラーマ!

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